三人の東洋人が列車に乗りこむ(2日目 その1)

朝食をとってから、部屋に戻ってスーツケースの荷物を詰め直す。
新しく買ったモノなど無いはずなのだが、なぜか嵩が増している。
空いた時間を使ってA藤くんは弓の練習をする。僕はブログを書く。モンキーはMTVを観る。
今日は電車でヴェローナに向かう。

ミラノ中央駅でユーレイル・パスにヴァリデーションをしてもらい(メチャクチャ並んだ)、これで今回の乗車が許可される。
ユーレイルパスは分かりやすくいうと青春十八きっぷみたいなシステムである。
ただ使用できる範囲が非常に広大であるのと(ヨーロッパ全域)、使用前に駅で認証のスタンプを貰わねばならないのだ。

11:25発、ヴェネチア行き。ヴェローナ到着予定時刻は13:16。
スーツケースをガラガラと引きずり、二等車に乗り込む。
二等車は予想以上に混んでいる。何処からきたのか分からないが、何処もかしこも大きな荷物を持った旅行者たちばかりである。
ようやくボックス席を見つけ3人で座る。となりにイタリア人のお婆さんがちょこんと座る。
しかしそのファッションセンスはなかなかどうして強烈である。指輪など両手に四つもつけていた。
列車が出発すると同時にミラノは雨が振り出した。やれやれ、間一髪だ。
肌寒くなってきたので、ウインドブレーカーを羽織る。

うとうとと寝ている間にヴェローナが近づく。
列車が時間通りに発着するものだと信じ込んでいる我々は、もしかしたら違う電車に乗ったのではないかとそわそわしてくる。
しかし勿論そんなことはない、10分くらい遅れて到着しただけだ。

我々が今回泊まるのは、いわゆるBed&Breakfast。
一泊30ユーロほどだが、朝食、ベッド、それからトイレとバスが利用できる(ただし共用)。

さてヴェローナに着いた我々は、バスに乗ってPiazza lucaなる場所で降りることになっていた。
ホテルまでは1キロほど。しかしミラノの時はもちろんと違って若干遠かったので、バスで行こうという話になった。

しかしバスの乗り方は極めてわかりづらい。
駅のバスターミナルでしばらく乗り方を観察してみたのだが、皆手ぶらで乗って手ぶらで降りてくる。
「もしかしたら金を払わなくていいんじゃないか?」
3人の頭に同時に同じ事が浮かんだ。これをシンクロニシティと呼ぶ。

しかし勿論我々はそんなことはしない。していない。
そうこうウロウロ迷っているうちに、我々が乗ろうと思っていた13番のバスがやってきた。
「えーい、ままよ!」
よせばいいのに半ばやけくそで乗り込む。ただでさえ混雑しているバスの中、スーツケースを抱えた我々はいい迷惑である。
乗り込むと、中にチケットを買う機械の様なモノが設置されている。
もしやこれではないか? モンキーが2ユーロ入れてみる。
我々は何か念じながら成り行きを見つめていたが、しかしコインは乾いた金属音を立て戻ってきた。

見兼ねた兄ちゃんが、こうするんだよ、という風にボタンを押してくれる。
しかし無常にもコインは戻ってくる。
ん?という風にお兄さんもいじってみる。そのうちコインがソケットに入る。1.2ユーロという表示が出る。チケットらしきモノが出てくる。
おお…と喜んだのもつかの間。今度はお釣りが帰ってこない。
仕方が無いので、1.6ユーロ足して、もう2人分買う。

そうこうしているうちに、バスは中心部に近づいてくる。
しかしpiazza lucaなる停車駅はまったく見えてこない。
おいおい。
お兄さんにグラッツェと言い、飛び降りる。
「ここはどこだ?」
「とりあえず人の多い方に歩いてみましょう」
するとアレーナが見えてくる。雨は止んでいたが、どことなく不安である。